Cork - Cobh Railway (Ireland)

 アイルランド共和国第二の都市コークと、郊外の港町で、タイタニック号が最後に出航したことで知られるコーヴ

 この間を結ぶ全長19キロ、途中駅5駅の短い鉄道路線は、都市近郊路線でありながら、海や湾の景色が素晴らしい、アイルランド有数の景勝路線でもあります。

 

 ここはまた、日本の東急車輛製ディーゼルカーが今も活躍している、欧州では稀少価値ある路線です。

 この19キロの路線をメインに、途中で分かれ、ウィスキーの町ミドルトン(Midleton)へ向かう路線や、コークから北上し、ダブリン(Dublin)へ向かう本線も、追って徐々に紹介していく予定です。

 



コーク駅
Cork Station
コーク~リトルアイランド
Cork - Littleisland
リトルアイランド駅
Littleisland Station
リトルアイランド~グロンタウン
Littleisland - Glounthaune
グロンタウン駅
Glounthaune Station
グロンタウン~フォタ
Glounthaune - Fota
フォタ駅
Fota Station
フォタ~キャリガロー
Fota - Carrigaloe
キャリガロー駅
Carrogaloe Station
キャリガロー~ラッシュブルック
Carrigaloe - Rushbrooke
ラッシュブルック駅
Rushbrooke Station
ラッシュブルック~コーヴ
Rushbrooke - Cobh
コーヴ駅
Cobh Station


お知らせ

 

ここ十数年、時刻表や運賃に大きな変化がなかったのですが、2022年4月から、段階的な運賃引き下げ、続いて7月から列車増発が決まりました。本サイトも近いうちに更新いたしますが、このページは2022年3月現在の情報であり、以後変化していることを、ご了解の上、ご利用下さい。


路線と運行の概要

 

 日本のような線名はなく、コーク・コーヴ・サバーバン・レールとか、コーク・コミューター・レールなどと呼ばれる、普通列車のみの近郊路線です。途中のグロンタウンで分岐してミドルトンまでの線は、2009年に廃線を復活させた線で、コーク~グロンタウン間は共用で、運行も一体です。合わせて、コーヴ・ミドルトン・レールなどと呼ばれることもあります。

 日本のようなキロ数の公開はありませんが、コーク~グロンタウンが約9キロ、グロンタウン~コーヴが約10キロ、グロンタウン~ミドルトンも約10キロあります。コーク~コーヴは全線複線、グロンタウン~ミドルトンはほぼ単線です。全線非電化です。

 列車はコーク~コーヴと、コーク~ミドルトンの運行で、通常ダイヤでは、途中駅止まりや、コークから北へ向かう本線との直通列車はありません。

 コーク~コーヴも、コーク~ミドルトンも、片道約25分です。昼間はどちらも1時間に1本で、同じ車輛が行ったり来たりする単純で覚えやすいダイヤです。平日朝夕は30分に1本に増便されます。従って、コーク~グロンタウン間は、朝夕は15分に1本の列車があり、上下合わせて1時間に8本やってくるので、短時間で沢山撮影したい方にはお勧めです。土曜は一部減便があり、日曜は午前中を中心にさらに本数が減ります。

 路線は基本的には沿線住民の足で、沿線各地からコークへ出る地元民の利用が最大ですが、リトルアイランドは企業が多く、そこへの通勤にも使われます。動物園などのある自然の行楽地フォタと、タイタニック号最後の寄港地コーヴは、ガイドブックにも載る比較的メジャーな観光地なので、これらへ向かう観光客もかなり利用します。

 

車輌について

 

 コーク~コーヴ・ミドルトン間で通常使われている車輌は、アイルランド国鉄2600系ディーゼルカー(気動車)です。この車輌は今はなき日本の旧・東急車輛製造(株)が完成車として日本から輸出した車輌です。鉄道車輌メーカーの多いEUにおいて、日本から完成車としてEU向けに輸出された最初の車輛という、輝かしい歴史を有します。営業運転開始は1994年で、当初はダブリン近郊で運用されていました。

 この2600系は、2輌固定編成が8編成あり、今は全てがコークに配置され、コークを中心に運用されています。この路線の他、北はマロウ(Mallow)を経てトラリー(Tralee)までの線にも一部使われますが、通常は本線のマロウ以北へ足を延ばすことはないようです。他方、このコーヴ・ミドルトン線にも、稀に検査や故障などの代替で他の形式が入線します。

 2ドアの両開きで、座席は``ごく一部を除き4人掛けボックスシートです。2輌の車輛番号は、必ず奇数と偶数です。奇数番の車輛はトイレ付きで車椅子スペースがあるので、座席定員は58名と少なく、偶数番の車輛は座席定員71名です。

 各編成の2輌の車番は、2601と2602のように揃っているのもありますが、そうでないのもあり、奇数番と偶数番のどちらがコーク寄りかもバラバラです。そのようになっている理由は、事故廃車があって、組み直したためだそうです。2601~2617まであり、2609が欠番です。

 通常は2輌編成、ラッシュ時や夏の観光シーズンなどは、随時、2編成つないで4輌編成で走ります。

 

乗車案内

 

 日本で最近流行りの言葉に「撮り鉄」「乗り鉄」などがありますが、ここでは「乗り鉄」向けに、あるいは鉄道に特に興味はなく、観光などで利用するのでちょっと知識を、といった方にも役立つことを、簡単に記しておきます。(撮り鉄向け情報はそれぞれの駅と駅間のページに記述しています。)

 といっても先進国の鉄道ですし、片言の英語さえわかれば、乗車自体は難しいことはありません。各駅停車のみの短距離のコミューター路線なので、事前予約は不要、というより、したくでもできません。

 鉄道員に、日本のように、一秒たがわず正確に発車させようという気質はなく、やや大雑把感はありますが、短距離路線ということもあり、時間は割と正確です。ダブリン方面からの列車が遅れると、接続待ちでコークの発車を遅らせることはたまにあります(特に最終)が、逆はダブリン行きを待たせることはほとんどないようなので、乗り継ぎには余裕を持たせておきましょう。途中駅での1~2分の早発はたまにあるので、心持ち早めに駅に着くことをお勧めします。

 基本的にワンマン運転で、運転士がドア扱いや車内放送もします。ドアは半自動で、ボタンを押して開け閉めします。車掌は乗っていたりいなかったりですが、ドア扱いや車内放送はしません。車掌の基本的な仕事は検札です。

 自動放送もなければ、車内の電光掲示などもありません。車内放送は運転士によって、しない人もいるので、途中駅で降りる場合は、乗客自身も気を付けておく必要があります。

 車椅子での乗車や、自転車の持ち込みは、基本的には問題ありません。車椅子の場合、ホームと列車に段差があるので、補助が必要で、駅員または運転士が渡り板でのサポートをしてくれます。

 

運賃と切符案内

 

 切符は、定期券等は別にすると、駅の窓口での対面購入(コークとコーヴのみ)、自動券売機での購入(フォタ以外の全駅)、インターネット予約、IC乗車券リープ・カード(Leap Card)利用の4種類があります。券売機のないフォタ駅から乗車する場合を除き、切符を持たず乗って車内で購入することはできないというか、そうすると無賃乗車扱いとなり、高額の罰金が課されます。

 運賃は、購入方法によって異なります。駅窓口または券売機での購入は、日本で言う普通運賃に当たり、一番高いです。種類は片道(Single)と、当日の往復(Day Return)の2種類で、往復は片道の2倍より安いです。コーヴからコーク経由ダブリンなど長距離であれば、1ヶ月有効の往復乗車券などもあります。

 インターネットでの購入は、アイルランド鉄道の全線で可能で、列車指定で発車の90分前まで買えて、普通運賃より少し安いです。ただ、長距離のインターシティーは指定された列車に乗らないといけませんが、コミューター路線は当日であればどの列車に乗っても問題ないので、発車直前に予約して買って乗っても大丈夫です。駅で買うぐらいなら、スマートフォンさえ持っていてWi-fiがつながるなら、ネットでカードで払ってから、駅の券売機で発券する方が安くなります。買い方は、アイルランド鉄道のサイトで区間と列車を指定して、クレジットカードで支払います。支払い完了すると、予約番号が画面に表示され、同時にメールでも届きます。その後、駅の自動券売機に行って予約番号を入れると切符が出てきます。アイルランド全土、どの駅の券売機でも発券できます。往復割引は無いので、同じ区間を往復する場合は、駅買いとあまり変わらない場合があります。他の路線では往復なら駅買いの方が安い区間もあります。

 IC乗車券(リープ・カード)は、日本のスイカやイコカなどと同じ使い方ですが、日本と違い、運賃は大幅に安くなっています。ただ最初の購入時にデポジット5ユーロがかかりますので、ごく短期の訪問の方ですと、払い戻しの手間なども考えれば面倒かもしれません。コークだけでなくダブリンやゴールウェイなど、多くの市内交通で共通利用できるので、ある程度アイルランドを回る人は1枚買うことをお勧めします。長距離路線では使えません。コークの場合、鉄道ではコーク~コーヴ・ミドルトン線のみで、北へ本線をマロウ・ダブリン方面に乗る場合は、隣駅マロウまでの乗車でも使えませんからご注意下さい。

 自動改札機があるのはコーク駅だけです。他の駅では乗車の時と降車の時の両方とも、ICカード読み取り機(Validator)にタッチします。日本のように、乗車用と降車用の読み取り機は分かれていません。乗車タッチをする時に、最大額(全線乗車よりさらに少し高い額)が引き落とされ、降車タッチをした時に差額が払い戻される仕組みです。乗車タッチをしてから90分以内に降車タッチをしないと、最大額が引き落とされたままとなります。降車タッチを忘れたのに後から気づいて駅に戻ってタッチしてもいいですが、それが乗車から90分を過ぎていると、既に最大額での引き落としが終わっており、そのタッチがさらに新たにこれから乗車するタッチになってしまうので、ご注意下さい。

 これはコークからとコーヴから各駅までの運賃比較表(単位:ユーロ)です。2021年10月現在で、変更されることもあります。特にインターネット運賃はこまめに変更があるようです。途中駅から途中駅の運賃や、ミドルトン線を含む運賃などは、アイリッシュ・レールのサイトでご確認下さい。

 窓口・券売機の運賃のみ、往復割引があります。これは当日の往復のみ有効です。その他の往復運賃は、単純に片道の2倍です。

 ご覧の通り、片道でも往復でも、ICカードがかなり安くなっています。

 日本のような対キロ運賃表のようなものはないようで、運賃は各路線の事情によって個別に政策的に設定されているようです。コーク~フォタなどは、距離を考えるとかなり割高ですが、この区間はほとんど観光客の利用で生活利用ではないので、そこを狙い撃ちして高めに取っているように思われます。実際、コークからフォタまたはキャリガローに行く場合、コーク~グロンタウン(ゾーンB)と、グロンタウン~フォタ・キャリガロー(ゾーンA)と分割した方が、全区間を一枚で買うより安くなります。

 コーヴ線に加えてミドルトン線とコーク市内のバス(かなり郊外まで含まれる)を1日乗り放題のチケット(Adult 1 Day Rail (Cobh & Midleton) & Cork City Bus Services)は、13.40ユーロです。鉄道よりバスの方が安いので、バスがメインの場合は、バスだけのもっと安い1日チケットがあるので、そちらがお勧めです。鉄道を4~5回程度、あるいは鉄道を2回とバスを数回、といった利用なら、こちらがお得になります。コーヴの対岸を走るバスにも乗れるので、例えば、コークからまずミドルトンへ、それからコーヴへ、そして帰りはフェリーとバス経由でコークへ戻るなら、元が取れます。この1日乗車券ではフェリーには乗れません。また、民営バスのコーヴ・コネクトも乗れません。

 

NEW! 2022年5月より、鉄道運賃が大幅に値下げされました!近日更新します。

 

コーク・コーヴ線 列車ダイヤグラム

  • 上記は2021年3月21日より実施の、平日のダイヤグラムです。
  • 黒の実線は、月~土の運転です。
  • 青の破線は、月~金の運転で、土曜運休です。
  • 緑の破線は、土曜のみ運転です(朝の1往復のみ)
  • 日曜日は大幅にダイヤが変わりますので、ご自身でご確認下さい。
  • コーク~グロンタウンのみ記載でグロンタウン切れているスジは、全てミドルトン発着です。
  • このダイヤグラムは、日本の無料ソフトウェア OuDia を使って作成しました。

訪問の参考になる外部リンク(全て英語)

 

★ アイルランド鉄道(Irish Rail)ウェブページ 

 ホーム コーヴ・ミドルトン線運賃 コーヴ・ミドルトン線時刻表(PDF)

 コーク駅 リトルアイランド駅 グロンタウン駅 フォタ駅 キャリガロー駅 ラッシュブルック駅 コーヴ駅

★ 沿線訪問の参考になる交通機関のウェブサイト

 バス・エラン Bus Eireann(アイルランド全土を網羅する公営バス)

 コーヴ・コネクト Cobh Connect(コークとコーヴを結ぶ民営バス)

 クロス・リバー・フェリー Cross River Ferry(コーヴ付近の海峡で対岸とを結ぶフェリー)

 コーク空港 Cork Airport